在庫管理をExcelのまま続けるか、市販の在庫管理ソフトに移すか、自社用のアプリにするか。
この3つには、会社ごとに向き不向きがあります。ただ、選ぶ前に見ておくべきことがあります。この記事では、それを3つにまとめます。
さいたま市内の中小企業で、在庫管理のアプリを作ったときの話も交えて書きます。
Excelの在庫管理で、困りごとが出やすいところ
Excelの在庫管理は、始めるのが簡単です。表を作って、入ってきたら足して、出ていったら引く。最初はこれで十分回ります。
困りごとが出やすいのは、たとえばこんなところです。
- 社内のサーバーや1台のパソコンに置いたファイルだと、何人かで同時に書き込みにくい(クラウドで共同編集しているなら、ここは当てはまらない)
- 現場で使った部品を、あとから入力することになり、記録が遅れやすい
- 在庫が減っていても、表を開かないと気づけない
Excelが悪いわけではありません。数字を置いておく道具としては、とても便利です。ただ、知らせる仕組みを別に作っていないExcelでは、だれかが入力して表を開くまで、在庫の変化に気づけません。そこが、在庫の動きに追いつかなくなる元になりやすい。
見ていること1:在庫が動いたとき、だれがどこで記録するか
1つ目は、在庫が動いた瞬間のことです。
部品が入ってきたとき、出ていったとき。それを記録するのは、事務所にいる人なのか、現場にいる人なのか。その場で記録できるのか、あとでまとめて入力するのか。
記録するのが事務所の1人で、動きもゆっくりなら、Excelで十分回ります。現場の何人もが、その場で記録したいなら、スマホから入力できる仕組みが合います。
見ていること2:案件のために取っておいた部品を、どう分けるか
2つ目は、同じ部品でも「どの案件のために取っておいたか」を分けたいかどうかです。
棚にある数だけ分かればいい会社もあれば、「この10個のうち4個は、あの案件用に手配済み」まで分けたい会社もあります。後者だと、在庫の数と、自由に使える数がずれてくる。
市販の在庫管理ソフトは、仕入れて・売って・数える、という流れがよく作り込まれています。ただ、案件ごとの取り置きのような自社のやり方があると、項目を使い回すことになりがちです。
見ていること3:在庫が切れる前に、だれに知らせるか
3つ目は、在庫が少なくなったときのことです。
少なくなったと気づくのは、だれか。表を開いた人が気づくのを待つのか、仕組みのほうから知らせるのか。知らせるなら、発注する人に届くのか。
在庫切れに気づくのが遅れると、現場の作業が止まることもあります。ここは、在庫管理の中でもいちばん影響が大きいところです。
実例:入出庫・案件別の手配・在庫切れの知らせを1つにしたアプリ
さいたま市内の中小企業で作った在庫管理アプリは、ちょうどこの3つを1つにまとめたものでした。
- 部品の入庫・出庫を記録する
- 案件ごとに、どの部品を手配したかを管理する
- 在庫が少なくなったら、アラートで知らせる
- 担当するスタッフを管理する
- Excelの形にも出せる
最後のExcelに出せる、は地味ですが大事なところです。アプリにしても、今までExcelで見ていた人がいなくなるわけではありません。いつもの形で出せると、切り替えのときに困る人が少なくて済む。
このアプリは、今も本番で使われています。
3つを見てから、道具を選ぶ
Excel、市販ソフト、自社用アプリの違いは、機能の多さではありません。記録する場所と会社のやり方が、仕組みに合うかどうかです。
たとえばスマホからの入力だけが必要なら、今のExcelを残して入力のところだけ変える形もあります。反対に、案件ごとの取り置きや在庫切れの知らせまで一つにつなげたいなら、表だけを直しても同じところで詰まりやすい。全部を置き換えるか、何もしないかの二択ではありません。
市販ソフトを見るときも、機能一覧の丸の数より、実際の部品名を入れて、入庫から案件への取り置き、在庫が減ったときの知らせまで一度通してみてください。そこで言葉や手順を何度も読み替えるなら、使い始めたあとも同じ小さな手間が残ります。逆に、いつもの流れがそのまま通るなら、自社用に作る理由は薄くなる。
そのうえで3つを見ると、選ぶものは自然に絞られます。
記録する人が少なく、案件ごとの取り置きもなく、在庫切れも表を見れば分かる。そういう会社なら、Excelのままか、入力のしかたを少し整えるくらいで足ります。
案件ごとの取り置きはなく、流れがよくある形に近いなら、まず市販のソフトを試すのが早道です。市販の仕組みと自社の流れが合わないときの見方は、kintoneが合わなかった会社の話にも書いています。
現場の何人もがその場で記録して、案件ごとの取り置きもあって、在庫切れを先に知りたい。そうなると、自社用のアプリが合います。最近は、Claude Codeのように話しかけながらアプリを作れるAIの道具もあって、社内の担当者さんが自分で作ったり直したりできる幅も広がってきました。
切り替えのときに、止まりやすいところ
どれを選んでも、切り替えのときの負担は残ります。
台帳と実際の在庫を合わせてから移るなら、棚卸で数えた数を新しい仕組みの最初の数にすることになります。今の台帳が実際の在庫と合っていると確かめられていれば、そのデータを移して、全部を数え直さずに始められることもあります。
移す作業を普段の仕事と並行してやる負担が大きいと、切り替えそのものが止まりやすくなります。移すときは、棚卸の数を最初の数にして、よく動く部品から順に載せるのがおすすめです。一度にきれいに切り替えるより、現場が止まらないことを優先します。
見るべきなのは、Excelの限界そのものより、入力が遅れる場所と、だれかが我慢している場所です。そこが見えれば、Excelに残すところと、アプリに移すところははっきり分かれます。