「在庫管理のアプリを作りたくて見積を取ったら、80万円って言われたんですよ。これ、普通ですか?」
先日、埼玉の機械部品加工会社の社長さんから、Zoom越しにこう聞かれました。従業員18名、製造業。Excelで在庫を回しているが、棚卸のたびに数字が合わない。ITに強い社員はいない。3社から相見積を取って、安いところで80万円、高いところで150万円。
社長は固まっていました。「投資としては妥当な気もする。でも、こんなものなのか」。今日はこの「80万円問題」を、外注の中身から3つの選択肢まで分解して書きます。
「見積80万円」に固まってしまう前に
外注見積の数字は、出た瞬間に判断できるものではありません。80万円が高いのか安いのかは、その中に何が含まれているかで変わります。
たいていの見積書には「設計」「実装」「テスト」「導入」「保守」と並びます。社長さんがよく見るのは合計の80万円。でも実際の判断材料は、その内訳と、書かれていない前提のほうにあります。
「3年間で何回、追加で見積を取り直すか」。これが書かれていない見積を、合計額だけで判断するのは早いです。1本目が80万円で済んでも、半年後の改修で30万円、1年後の機能追加で50万円。気づくと3年で200万円を超えている、というのが業務アプリ外注のよくある現実です。
なぜ業務アプリの外注は高くなりがちなのか
外注の見積が高くなる理由は3つあります。
ひとつめは「仕様の往復」です。御社の業務は御社にしか分かりません。在庫の検品ルール、見積の値引き慣行、勤怠の例外処理。外注先は最初の打ち合わせでこれを聞き取りますが、1回で全部は出てきません。「現場に確認します」「来週の在庫日に立ち会わせてください」。この往復に、開発工数の3割ほどが消えます。
ふたつめは「保守を見越した値付け」です。納品して終わりではなく、納品後に「ここを直したい」が必ず出る。良心的な外注ほど、保守の体力を価格に織り込みます。これが「同じ機能を作るのに、他社より20万円高い」の正体だったりします。
みっつめは「属人化リスクへの保険」です。外注先からすると、御社の業務を理解した担当エンジニアが辞めたら、また誰かが業務をゼロから理解しなおさないといけません。このリスクをカバーするための余裕が、見積に乗ります。
つまり80万円の中身は、コードを書く時間だけじゃない。「御社の業務を理解しなおす時間」と「将来の修正に備える保険料」が、かなりの割合で入っています。
いま御社に開いている3つの選択肢
業務アプリが必要なとき、選べる道は3つです。フラットに並べます。
A. 外注で作る
御社が業務を伝え、外注先がアプリを作って納品する。1本目は早く動き出せます。費用は機能の複雑さで変わりますが、シンプルな勤怠アプリで5万〜10万、在庫や見積で15万〜30万、複数業務をまたぐ複合アプリで30万〜50万円が一つの相場感です。冒頭の80万円は、おそらく業務固有の例外処理を多く含むケース。相見積で大きく振れるのは、外注先が見積に乗せる「リスク料」の幅です。
B. SaaSで間に合わせる
kintoneのようなノーコード型や、業務特化のクラウドサービスを使う道。初期費用が抑えられ、月額1,500〜5,000円から始められます。標準機能でハマる業務なら最短で動きます。ただし御社の業務が標準から2割ずれた瞬間、設定でカバーできない壁に当たる。月額が積み上がっていくのも、3年で見ると無視できません。
C. 社内で作れる人を育てる
いまいる社員1人が、AIを使って業務アプリを作れるようになる道。プログラミング未経験でも、いまのAIなら2ヶ月で「自分の業務を自分でアプリ化できる」ところまで届きます。1本目を作りきった時点で、2本目以降は社内で完結する。費用は2ヶ月で30万円。モニター枠(先着3社、事例公開協力が条件)なら2ヶ月20万円です。
それぞれが向く会社・向かない会社
3つの選択肢は、御社の状況によって向き不向きがはっきり分かれます。
Aの外注が向く会社は、業務の中身が大きく変わらず、1本作れば数年そのまま使える業務がある会社です。逆に「業務が頻繁に変わる」「現場の声で毎月修正したい」会社には向きません。改修のたびに見積を取り直す手間と費用が、効率化で得た時間を食い潰します。
BのSaaSが向く会社は、業務がほぼ標準的で、御社固有のルールが少ない会社です。逆に「うちの検品ルールは特殊で」「見積ロジックが業界の中でも独特で」と思っている会社は、SaaSの設定だけでは届かない領域に必ず当たります。
Cの内製化が向く会社は、Excelで業務を回せている事務担当か、現場の業務を一番分かっている社員が1人以上いる会社です。プログラミング経験は要りません。むしろVBAを書ける人より、「Excelで業務を回している人」のほうが向きます。業務を分解して考える癖がついているからです。
逆に向かないのは、「社員に新しいことを覚えてもらうのは無理」と社長が決めている会社。本人の意思の問題なので、向き不向きは無料相談の30分でだいたい見えます。
外注に毎年払い続ける未来と、2ヶ月で内製化した未来
冒頭の機械部品加工会社、3年後の姿を2パターンで並べます。
パターン1:今回80万円で外注した場合
在庫アプリは半年後に動き始めます。社長はホッとする。ただ1年経つと「現場から新しい要望が出てきた」と事務担当が言ってくる。検品ステップの追加で30万円、棚卸画面の改修で20万円。2年目には「見積アプリも作りたい」という話が出て、別の外注先に50万円。3年目、勤怠と日報をつなぐ要望で70万円。
3年後、社内に残っているのは「外注会社3社の連絡先」と「動くけど直せないアプリ4本」。社員は誰一人アプリを触れない。新しい業務が出るたびに、また見積を取り、また3週間待ち、また数十万円払う。3年で外注に消えた額はおおよそ250万円。
パターン2:今回30万円で社内に作れる人を育てた場合
最初の2ヶ月、事務の方が週1回90分、合計7〜8回の伴走で在庫アプリを作りきります。2ヶ月目の終わりには、自分一人で改修できる状態です。
3年経つと、社内には在庫アプリ、見積アプリ、勤怠アプリ、日報アプリの4本があります。全部その社員が作りました。新しい業務が増えたら、その社員が翌週には叩き台を作っている。「外注に出すかどうか」という会議そのものが、社内から消えています。3年で投じた費用は30万円。残ったのは「うちは社内で作れる」と言える体制です。
外注が悪いわけじゃありません。スピード重視で1本目を回したい、社員のリソースをこれ以上割けない、そういう会社にはAが合います。ただ「3年後に何が残るか」を考えると、選択肢はAの一択ではない、という話です。
まず何から始めるか
「うちはどれが合うんだろう」と思ったとき、最初の一歩は次の3つから選べます。
ひとつめ:いまの外注見積を一度棚卸しする
手元に外注の見積書があるなら、「保守費」「修正対応」「将来の機能追加」がどう書かれているかを見直してみてください。3年トータルで考えたときの総額が、表に出てきます。
ふたつめ:教育プランの中身を見てみる
「社員が2ヶ月でどこまで作れるようになるのか」が気になる方は、教育プランの詳細を読んでください。週1回×計7〜8回×各90分の内訳、向く社員と向かない社員、必要な前提(Claude Proの契約、ノートPC1台)まで、全部書いてあります。
みっつめ:30分の無料相談で整理する
御社の業務と人員を聞いて、A・B・Cのどれが合うかを一緒に整理します。営業電話なし、Zoomで30分、その場で結論を出す必要はありません。「向き不向きの判定だけ知りたい」でも構いません。
「80万円の見積に判子を押す前に、もう一度、選択肢を並べ直す」。それだけで3年後の風景が変わります。