最近、相談で一番増えているパターンがあります。
「kintone入れたんですけど、結局Excelに戻っちゃって」
これ、月に2〜3回は聞きます。私は埼玉で中小企業の業務アプリを作る仕事を10年ほどやっているんですが、ここ1〜2年で明らかにこの相談が増えた。kintoneに限らず、ジョブカンとかfreeeとか、SaaS全般の「入れたけど使いこなせてない」相談ですね。
先に言っておくと、kintoneが悪いサービスだとは思っていません。合う会社にはすごく合う。実際に「kintoneでうまく回ってます」って会社も知ってます。ただ、合わない会社もあるんですよね。で、合わなかったときの「じゃあどうするか」の情報が世の中に少ない。今日はその話を書きます。
「導入したのに使われない」が起きる3つの理由
kintoneを導入して定着しなかった会社の話を何社も聞いてきて、パターンが見えてきました。だいたい3つに集約されます。
1つ目は、設定する人がいない。
kintoneって、買っただけでは何もできないんですよね。自分たちで「アプリ」を作って初めて使えるようになる。ノーコードだから簡単、とは言われるんですが、「簡単」の基準がちょっと高い。
ある建設会社の社長が言っていたのが印象に残ってます。「ノーコードって聞いたから自分でやろうとしたけど、半日やって日報アプリしかできなかった。しかもなんか違う」と。IT担当がいる会社なら試行錯誤もできるんでしょうけど、15〜30人くらいの会社ってそもそもIT担当がいない。社長か事務の人が片手間にやるしかない。で、最初の設定で挫折する。
2つ目は、自社の業務にフィットしない部分がある。
kintoneは汎用的に作られているので、「80%は合うけど20%が合わない」ということがよく起きます。その20%のためにExcelを併用することになって、結果的に「kintoneとExcelの二重管理」になる。
これ言っていいのかな。正直、この二重管理の状態は、Excel一本のときよりめんどくさいです。どっちに入力するんだっけ、どっちが最新なんだっけ、って毎回なる。ある製造業の事務の方は「kintone入れたのに仕事が増えた気がする」と言ってました。本末転倒ですよね。
3つ目が、月額課金の積み上がり。
kintoneのスタンダードコースは月額1,500円/人。20人の会社だと月3万円、年間36万円です。3年で108万円。これが5年、10年と続く。
で、使いこなせていない機能にもお金を払い続けている状態。「半分くらいの社員は月に1回も開いてない」とか「結局使ってるのは日報だけ」とか、そういう話を聞くたびに、もったいないなと思います。
SaaSが合わなかった会社には何がある?
じゃあkintoneをやめたとして、次に何を選ぶか。
まず「別のSaaSに乗り換える」という手がありますが、これは正直おすすめしません。kintoneで合わなかった原因が「自社の業務フローと合わない」なら、別のSaaSでも同じことが起きる可能性が高い。SaaSは基本的に「一般的な業務フロー」に合わせて作られているので、独自の運用がある会社だとどうしてもズレが出る。
もう一つが、自社専用のアプリを作るという選択肢。
うちがやっているのはこれです。お客さんの業務に合わせて、そのまんまアプリにする。「勤怠はこうやって管理してるんです」「在庫はこのタイミングで確認してるんです」という今の業務フローをそのままシステム化するので、「使い方を覚える」というハードルがかなり低い。
「でも、アプリ開発って何百万もするんでしょ?」
これ、必ず聞かれます。たしかに5年前、10年前はそうでした。業務アプリ1本で200万〜500万は普通だった。でも今は開発の手法が変わっていて、社内専用の業務アプリなら5万〜50万円くらいで作れるケースが多いです。うちの場合、勤怠管理アプリなら5〜10万円くらいが目安。
しかも買い切り。月額課金なし。
コストを並べて比べてみる
数字で比較したほうが分かりやすいと思うので、20人の会社で3年間使う前提で計算してみます。
kintoneの場合(スタンダードコース)
月額1,500円 x 20人 = 月3万円
年間36万円
3年間で108万円
自社専用アプリの場合(勤怠管理を例に)
開発費:5〜10万円(買い切り)
月額費用:なし
3年間のトータルコスト:5〜10万円
3年間で見ると、108万円と10万円。この差は大きい。
ただし、公平に書いておくと、kintoneは勤怠管理だけでなく複数の業務アプリを1つのプラットフォームで管理できます。勤怠だけでなく案件管理や顧客管理もkintoneに乗せているなら、単純な金額比較はフェアではありません。あくまで「特定の業務だけをアプリにしたい」場合の比較です。
どんな会社に自社専用アプリが合うか
50社以上にアプリを作ってきた経験から言うと、自社専用アプリが合う会社にはパターンがあります。
合う会社
まず、業務フローが独特な会社。製造業で多いんですが、「うちの検品ルールは特殊で」とか「シフトの組み方が一般的じゃなくて」とか。SaaSだとここが合わずにExcelで補完することになる。専用アプリならそのまま対応できます。
それから、IT担当がいない会社。kintoneは自分たちで設定を育てていくツールなので、その「育てる人」がいないと放置されがちです。専用アプリは最初から業務に合わせて作ってあるので、導入後の設定作業がほぼない。
あと、月額課金をやめたい会社。3〜5年の総コストで考えると、買い切りのほうが安くなるケースが多いです。
合わない会社
逆に、自社専用アプリが合わない会社もあります。
業務が頻繁に変わる会社は、そのたびにアプリの改修が必要になるのでSaaSのほうが向いてます。あと、複数の業務をひとつのプラットフォームでまとめたい場合は、kintoneのような統合型のほうが管理しやすい。
50人を超えてくると、社内にIT担当を置いてkintoneを内製で運用したほうが効率的な場合もあります。
要は、規模と業務内容で「合う・合わない」があるという話です。
実際にkintoneから切り替えた会社の話
1社だけ具体的な話をします。
埼玉の建設業、従業員25名くらいの会社。kintoneで勤怠管理と日報をやろうとして導入したけど、半年で使われなくなった。理由は、現場の職人さんがkintoneの操作に慣れなかったこと。スマホで入力する画面が複雑で、「もういいや紙に書く」ってなったそうです。
そこで、スマホでボタンを2回押すだけで打刻できるGPS付きの勤怠アプリを作りました。画面はとにかくシンプルに。「出勤」「退勤」のボタンだけ。GPS情報は自動で記録されるので、現場にいたかどうかの確認も後からできる。
結果として、全員が毎日使うようになった。事務の方の月末集計作業も自動化できた。kintoneの月額課金(月37,500円)もなくなった。
正直、kintoneが悪かったわけじゃなくて、「この会社の現場にはkintoneのUIが合わなかった」だけだと思います。
まとめというか、言いたかったこと
kintoneやSaaSを導入して「なんか合わないな」と感じている方に伝えたいのは、「それは御社のITリテラシーが低いからじゃない」ということです。
ツールと業務の相性の問題です。
合わないツールを無理に使い続けるほうがコストは高くつきます。月額課金を払い続けながら結局Excelを併用している状態は、お金と時間の両方を失っている。
選択肢は「SaaSか、Excelに戻るか」の二択じゃない。「自社の業務に合わせたアプリを作る」という三つ目の選択肢がある。しかも、思っているほど高くはない。