先日、埼玉の製造業の社長さんとオンラインで話していたんですが、開口一番こう言われました。
「うち毎月25日になると事務の子が22時まで残ってるんだよね」
聞けば、タイムカードを1枚ずつめくってExcelに手入力してるんだと。20人分。日付のズレ確認して、残業計算して、有給突き合わせて。毎月毎月それを繰り返してる。
この話、実はめちゃくちゃよく聞きます。
私は10年ほど中小企業の業務をアプリに置き換える仕事をやっています。50社以上やってきたんですが、相談内容のダントツ1位が「勤怠のExcel集計をなんとかしたい」なんですよね。
今日は、Excel勤怠管理の何がつらいのか、そして実際に月8時間の集計を30分にした話を書きます。正直、もっと早く書けばよかった内容です。
Excelの勤怠管理、どこで詰むのか
5人くらいの会社なら、Excelでも全然回ります。問題は10人を超えたあたり。ここから一気にしんどくなる。
まず、手入力のミスが給与に直結する。
20人分の出退勤を毎月手入力すると、だいたい400件くらいの入力になります。人間なので当然ミスは出る。入力ミス率が1%だとしても月4件。これが給与に響くわけです。
「先月の残業代、少なくないですか?」って社員に言われて確認したら転記ミスだった、みたいな話。金額の問題だけじゃなくて、信頼の問題になるんですよね。これ結構きつい。
次に、属人化の問題。
あるあるなのが、「集計用Excelを作った人がもういない」パターン。VLOOKUPとIF文が複雑に絡み合ったExcelファイル、作った本人以外には触れない。担当者が休んだら集計が止まる。退職したら引き継げない。
これ、書いていいのか分からないですが、ある製造業のお客さんでは、事務担当が辞めたのをきっかけにうちに相談が来ました。引き継ぎ資料なし。Excelファイルの中身を解読するところからスタートでした。あれは大変だった。
それから、法改正への対応。
2023年4月に中小企業にも適用された「月60時間超の残業の割増賃金率50%」とか、2024年4月の建設業の上限規制とか。Excelだと、こういう法改正のたびに関数を直さないといけない。対応が遅れると割増賃金の計算を間違えるリスクがあって、これは正直怖い。
じゃあExcelの代わりに何を使うか
Excelの勤怠管理に限界を感じて調べ始めると、だいたい3つの選択肢にたどり着きます。
1. クラウドの勤怠管理サービス(SaaS)
ジョブカンとかKING OF TIMEとか、freee人事労務とか。月額200〜500円/人くらいが相場です。すぐ使い始められるのは良い。ただ、「80%は合うんだけど、残り20%は結局Excelで補ってる」っていう会社、けっこう多いです。
20人で月400円/人だと年間96,000円。5年で48万円。
2. kintoneみたいな業務プラットフォーム
カスタマイズ性は高い。でも「設定が難しくて結局使いこなせなかった」っていう声もよく聞きます。月額1,500円/人なので、20人だと年間36万円。
3. 自社専用の勤怠管理アプリを作る
うちがやっているのはこれです。ポジショントークだと思われるかもしれないので先に言っておくと、全部の会社にこれが合うとは思っていません。SaaSで十分な会社はSaaSを使ったほうがいい。
ただ、「うちの運用に合うものがない」「月額課金がずっと続くのは嫌だ」という会社には、専用アプリを作るほうが結果的に安くつくケースがあります。勤怠管理くらいシンプルな業務なら、5〜10万円で作れることも多い。買い切りなので月額はかかりません。
「え、アプリ開発って数百万するんじゃないの?」って聞かれることがあるんですが、最近は開発の進め方が変わっていて、業務アプリなら以前とはだいぶコスト感が違います。
実際に月8時間が30分になった話
具体的な話をします。従業員20名くらいの製造業の会社で、事務担当1名が月末にタイムカードを見ながらExcelに手入力していた。毎月8時間。残業2〜3日分。転記ミスで給与修正が年に数回。
ここにスマホ打刻の勤怠管理アプリを入れました。出退勤のときにスマホのボタンを押すだけ。データは自動集計されるので、事務担当がやるのは月末に「確認してポチッと承認」だけになった。
結果はこう。
- 月次集計:8時間から約30分に。やることは確認と承認だけ。
- 転記ミス:手入力がなくなったので、ほぼゼロ。
- 事務担当の月末残業:なくなった。
コスト削減の試算
前提:事務担当の時給を2,000円と仮定
削減時間:月7.5時間(8時間→30分)
月間削減額:7.5時間 x 2,000円 = 15,000円
年間削減額:15,000円 x 12ヶ月 = 180,000円
アプリ開発費が10万円の場合 → 約7ヶ月で投資回収
アプリ開発費が5万円の場合 → 約4ヶ月で投資回収
※あくまで一例です。従業員数や業務の複雑さで変わります。
「うちの社員、アプリ使えるかな」問題
この心配、ほぼ100%聞かれます。気持ちはすごく分かります。
ただ実際のところ、操作は「スマホでボタンを押す」「パソコンで一覧を見る」くらいです。タイムカードを押すのと手間は変わらない。Excelが使える人なら全く問題ないです。
あと、いきなり全社で使い始める必要もなくて。最初は事務担当の方だけに触ってもらって、「これなら大丈夫そう」ってなってから全員に広げる。そのほうが確実です。
SaaSか自社アプリか、正解はない
個人的には、「どっちが正解」という話ではないと思っています。
SaaSには、常に最新の法改正に対応してくれるとか、サポートが充実しているとか、良いところがたくさんある。一方で、月額課金がずっと続くこと、自社の運用に100%はフィットしないこと、この2つが気になる会社もある。
自社専用アプリは買い切りで月額なし。自社の運用にぴったり合わせられる。ただし法改正対応は自分たちでやる(もしくは依頼する)必要がある。
自社の規模、予算、業務の複雑さで選ぶ話だと思います。
最後に
もしExcelの勤怠管理に限界を感じているなら、まず一つだけやってみてほしいことがあります。
「毎月の集計に何時間かかっているか」を計ってみてください。
その時間に時給をかける。年間でいくらになるか。転記ミスの修正は年何回か。担当者が辞めたら誰が引き継ぐのか。
この3つを書き出すだけで、「今のまま続けるコスト」が見えてきます。それが年10万円を超えていたら、別の方法を考えてもいい頃かもしれません。